バフを掛けよう

今回は、『「信用」と「信頼」 似ているけれど「使い分けるコツ」は何?』という記事をご紹介します。

一般的に大人というと「信用」出来る人であり、「信頼」出来る人であるという認識だと思います。

子育て中の保護者も我が子がそんな大人になってくれるよう、何かにつけてあれこれと話をしているのではないでしょうか。

ですが、そんな保護者自身が自分の保身のために嘘を吐いたり、我が子に限らず誰かを騙すようなことをしていれば、そんな保護者を毎日のように見ている子どもは、それが当たり前の世界だと思ってしまいます。

人間を含む哺乳類は身も心も未熟な状態で生まれるため、誰かからお世話され、自分では分からないことは誰かから教えられないと生きていけません。

何のストレスもない心の底から安心出来る環境で、生きていくために必要な知識・知恵を身に付け、社会の仕組みを学び、生活に関する技術を磨く。

何も知らない分からない子どもにとって、目の前に広がっている風景が、この世界の当たり前なのだと思い込んでしまうのも当然ではないでしょうか。

例えば、保護者が息を吸うように当たり前の顔で子どもに嘘を吐くような人だったとします。

保護者は冗談のつもりだったかもしれませんが、素直でまだ世間を知らない子どもに冗談が通用するはずもありません。冗談を面白いと思えるのは、それが冗談だと分かりきっている大人同士だからです。

しかも、嘘を吐いたのかと子どもが怒って見せても、こんな冗談も分からないのかと大人から笑われたりすると、嘘を見抜けなかった自分が悪いと子どもが思うのも当然ですよね。

素直な子どもが、それまで信頼しきっていた保護者から騙されていた。嘘を吐かれていたとなると、本人から見えている世界は一気に誰も信用できない暗黒の世界になります。誰の言葉も信用出来なくなります。

では、大人は冗談も言ってはいけないのか、あれこれ我慢しなければいけないのか、そんなの出来るはずがないだろうと思われるかもしれませんが、一つだけ子どもが生まれ持っている綺麗で美しい世界を守る方法があります。

保護者やその周辺の大人が子どもを見て笑うのは、子どものことが大好きで可愛いなと思っているからだと本人に教えてあげることです。

実際、子どもがコケたり失敗した時についつい笑ってしまう大人は多いと思いますが、それはバカにしたような笑いではないはずです。赤ちゃんやよちよち歩きの小さい子を見ると、抑えようとしてもついついニコニコしてしまうアレと一緒ですよね。

もちろん、バカにしたような笑いを向ける大人気ない大人もいると思いますが、そんな大人は大人になりきれていない子どものような大人であって、子どもが気に病むような存在ではありません。

周囲の大人が子どもに向かって笑うのは、自分のことを可愛いなと思ってくれているから。

保護者からそう教えられた子どもは、素直にそれを信じます。保護者から何度も繰り返しそれを伝えられることで、悪意のある人間からバカにしたような笑いを向けられたとしても、自分が可愛いからかと思い込みます。

実際に、赤ちゃんや園児を見るとニコニコする大人たちを何度も何人も繰り返し見ることで、保護者が言っていたことは本当なんだと信用するでしょう。

そんな信頼に足る保護者から愛されているという実感と自信があれば、自己肯定感が高くなるので、ちょっとやそっとの悪意では傷付きません。

恐らくですが、バカにしたような笑いを向ける人間も、本人が気付いていないだけで可愛いなぁ好きだなぁいいなぁ羨ましいなぁと思っているから見ているし笑っているのです。本人は絶対に認めないと思いますが。何が何でも認めないと思いますが。

自分の気持ちを素直に認めていない人間はやっかいの極みなので、意地悪してくるとか意地悪を言ってくるというような子も、本人のことが好きだから構って欲しくてやっていることなのではと教えてあげると本人も気にしなくなりますし、本人が素直にそれを相手の子に伝えたとしたら、相手は絶対に二度とやらなくなります。不憫。

自己肯定感とは、保護者や周囲の大人が本人に掛けてあげられるバリアのようなものです。自己暗示に近いので、保護者や周囲の大人からの言葉が重要になってきます。

大好きだよ。すごいね。えらいね。頑張ってるね。出来るようになってきたじゃん。え、うちの子可愛すぎる。

保護者や周囲の大人からのこれらの言葉は、子どもに日常的にバフ(某有名な土管のゲームでいう、大きくなったり回復するためのキノコみたいなものです)を掛けているようなもので、そのバフが多ければ多いほど、強ければ強いほど、子どもは強く逞しく成長していきます。

もちろん、なかなかそういう声掛けが出来ないという保護者もいると思います。

そんな方は、ついうっかりで良いのです。ポロッと、可愛いなとか凄いなと本心を零してあげてください。子どもから聞かれた時は、照れくさいだろうとは思いますが、しっかりと応えてあげてください。

子どもがそういうことを聞いてくるのには理由があります。恐らくですが、外の世界で辛い何かがあったのです。でも、保護者に心配させたくなくて言いたくないのです。自分が尊敬している保護者から愛されている、存在を認められているという自信を取り戻したいのです。

滅多に言わない褒め言葉でも、滅多に言わない愛の言葉でも、滅多に言わないからこその威力があります。子どもにとってはそれだけでも充分です。

子どもは強いです。保護者があれこれやってあげていないし出来ていないなと思うようなことでも、やれないならやれないなりに、出来ないのなら出来ないなりに、どれだけ小さくても出来ることをコツコツと続けるだけで大丈夫です。

保護者に反発しまくっている子どもだとしても、意外ときちんと保護者の事情だとかを理解してくれています。出来ない事情をしっかりと説明すれば理解してくれます。

反発しまくってるのは素直じゃないだけです。どう言えば良いか分からず、自分の気持ちを言葉で上手く伝えられないだけです。子どもはただただ保護者に無理をして欲しくなくて怒っているのです。

「自分でやるの!」と、魔の2歳児の頃のように頑張ってみるけれど、保護者のようには出来ない自分が不甲斐なくてイライラしているだけなのです。そのことに本人も気付いていないと思いますし、絶対に認めようともしないとは思いますが。

そう考えると、ムカつく反抗期もただただ可愛いになりますよね。

子どもになかなか良い声掛けが出来ないという方は私たちにご相談ください。私たちも似たようなことで悩んでいる仲間です。どんな声掛けが有効だったか情報交換しましょうね。

教科書を作るために

今回は、『東大卒夫婦が抱えた「子育ての悩み」とは? 「頭良すぎるとそう思うんだ」の声…Xで盛り上がる教育の難しさ』という記事をご紹介します。

東大卒というともの凄く頭が良い人たちですが、上記記事を読むと分かるように、もの凄く頭が良い人たちでさえ自分の子を理解出来るようになるまで10年掛かっています。

この世の中に我が子を育てるための教科書なんてモノはありません。子ども一人一人個性があり、それぞれ人格が違うからです。東大卒の人たちも我が子を育てるための教科書なんてものはない状態で、一から我が子のことを知っていったのです。

ああでもない、こうでもないと頭を悩ませること10年。長い年月ですよね。人生が100年だとしたら、約10分の1です。そんな長い年月を掛けてやっと我が子のことを理解出来たところで初めて、その子に合った教育が始まるのです。

ですが、東大卒の人たちでさえ10年です。”普通”の人なら、子どもが自立しても分からないままかもしれません。

保護者にとって子育て期間は人生の約4分の1程度ですが、子ども本人にとっては自立するまでの人生全ての期間で、自分をあまり理解してくれていない大人たちからあれこれとお世話されることになります。

保護者だけでなく本人の周囲にいる全ての人が本人に対して無理解な状態であれば、結構なストレスですよね。自分ではどうすれば良いのかすら分からない状態で、周囲からは早く出来るようになれ、何で出来ないんだと言われるのです。

そんな状態の本人が感じている苦痛は、私たち保護者にとっての子育てと一緒です。

私たち保護者も自分が親からされたことと同じように育ててみるものの、トラブルが次から次へと続出するのです。自分が親から受けた教育が我が子には合わないとなると、一気に何も分からなくなりますよね。苦痛しか感じなくなります。

我が子可愛さだけで子育てをしているような状態になってしまうと、あっという間に親子ともに限界が訪れます。そうなれば家族崩壊なんてことにもなりかねません。

今現在、親子そろって苦痛しか感じていないのであれば、出来るだけ早く保護者向けのペアレント・トレーニングを学ぶことをオススメします。

ペアレント・トレーニングとは、発達にでこぼこがある子を持つ保護者向けに国や医療機関が推奨している子育て方法です。もちろん、発達にでこぼこがなくても有効ですし、我が子を育てるための教科書を保護者自身で作り出す方法だと思ってください。

そして、保護者がペアレント・トレーニングを学び、本人に効果的な子育て方法が理解出来るようになるまでは、本人に”何もしない”でください。赤ちゃんの頃と同じように、本人が出来ていないこと全てのお世話をしてあげてください。

もちろん、本人の心身の健康に関わること、犯罪に繋がるようなこと、他人に迷惑を掛けるようなことであれば全力で止めてください。叱ってあげてください。

ですが、それ以外のことはペアレント・トレーニングを学んで実践してみようと思えるようになるまで”何もしない”を徹底します。

相当難しいです。保護者は自分の感情をコントロールしなければなりません。

動画を見ながらゴロゴロしていても何も言ってはいけませんし、学校の宿題をやらずにゲームしていても怒ってはいけません。コップを割っても怒ってはいけませんし、脱ぎ散らかした服がリビングに置きっぱなしでも、保護者が「代わりに片付けておくね」と言ってから本人の代わりに片付けてあげるのです。本人が嫌がることも禁止です。

小学生、中学生、高校生ともなると相当大変ですよね。本人は楽かもしれませんが、保護者は自分の感情をコントロールするのと本人のお世話でもの凄く大変です。学業がない園児くらいの頃ならまだ楽かもしれません。

保護者が自分の感情を必死にコントロールしながら本人のお世話をしている間、当の本人はのんびりと過ごすわけですから、ただただ見ているだけしか出来ない保護者側は相当ムカつくと思います。お世話もあって大変ですから疲れもするでしょう。

ですが、どう考えても本人は穏やかになりますよね。保護者からあれこれ言われず、自分がやりたいことだけをやれるのです。癇癪(かんしゃく)なんて起こしませんし、保護者のことを無視したりもしません。好きなことだけをやっているので、本人も楽しく生活するでしょう。

保護者が今現在心の底から求めているのは、こんな穏やかな生活ではありませんか?

でも、穏やかな生活だったとしても、こんな生活をずっと続けるなんて無理だと思いますよね。出来ないって思いますよね。子どものためにもならないとも思いますよね。

続けられなければ、出来なければ、穏やかな生活は望めないのかというと、そうでもありません。

穏やかな生活をどうしても諦められないのであれば、保護者はペアレント・トレーニングを必死に学んで習得して、そして実践してください。本人には自分のことは自分で出来るようになって欲しいと言ってください。大人でも出来ていない人がいることなら、すぐすぐ出来なくても良いし、保護者も手伝うからと。

そして保護者自身と本人の頭に、”出来ないものは出来ない”を叩き込んでください。本人に出来るだけ無理をさせないでください。その上で、本人にとって無理のない範囲内で、自分のことは自分でやらせるようにしてください。どうすれば出来るようになれるかを一緒に考え、今の本人には出来ないことなら、「代わりにやっておくね」と言ってからやってあげてください。

保護者がペアレント・トレーニングを実践しながら本人の心身の健康を守り、犯罪に繋がるようなこと、他人に迷惑を掛けるようなことだけ叱るようにしていれば、本人は周囲の人間たちと違って自分に嫌なことをして来ないどころか、自分のお世話を一生懸命やってくれている保護者のことが大好きになるはずです。

そして保護者に興味を向けた本人は、本来なら自分がやるべきことを保護者にあれこれとやらせていることに気付きます。毎日忙しそうに動き回っている保護者の目の前で寝っ転がってゲームしている自分に気付き、居た堪れないという感情が生まれます。自分の代わりにあれこれと引き受けてくれている保護者がしんどそうにしていることに心を痛めます。

それからなのです。本人の中に自分のことは自分で出来るようにならなければという意欲が生まれるのは。

つまりは時間が掛かります。それこそ早くて10年、遅ければ自立してから必要に迫られて、なんてこともあり得ます。

子どもはコップのようなものだと聞いたことがあるでしょうか。最初は何も入っていない空っぽの状態で生まれて来て、長い時間を掛けて保護者や周囲の人間から愛情を注がれ続け、コップから溢れ出たものがお返しとして周囲へと還っていくのです。人間とはそういう生き物なのです。

ここで言う愛情とは、お世話してあげることも含みますが、本人を出来ることも出来ないことも含めてあるがまま受け止めてあげることです。認めてあげることです。本人が自分を知り、自己肯定感を高めることが出来るような思いやりのある声掛けです。

それなら、”普通”の人でも出来そうですよね。

本人が出来ていないことを、何で出来ないのか、早く出来るようになれと叱るのではなく、どうすれば出来るようになるかを考えてあげてください。今はまだ出来なくても良いよ。自分のペースで出来るようになれば良いからね。それまでは保護者が代わりにやってあげるからとも言ってあげてください。

そうすれば、自己肯定感が上がります。自己肯定感が高ければ、あれこれとチャレンジすることも出来るでしょうし、実際に出来ることが増えるにつれて自信にも繋がっていくでしょう。自分の足でしっかりと人生という道を切り開いていける子になれます。

出来ることは増えたけど何となく不安だったり自分が嫌いだという人は、自分の出来るところだけを認めていて、自分の出来ないところをダメな部分だと否定しているのではないでしょうか。

頭に叩き込んだはずの“出来ないものは出来ない”を今こそ思い出してください。今現在出来ていないのは、詳しいやり方を誰からも教えられていないからです。どうすれば出来るようになるのか教えられていないからです。出来るようになれとしか言われていないからです。あなたは何も悪くないです。

昔と違って今はGoogle先生がいます。調べれば色々と詳しくやり方を教えてくれますし、YouTubeなら動画で分かりやすく教えてくれている人もいます。

大人でもあれこれ出来るようになれますよ。練習前なのですから、今はまだ出来なくて当たり前です。

子育ても一緒です。本人を育てるための教科書を作るために、まずは本人のことに詳しくなってください。どんなことが出来てどんなことが出来ないのか、当の本人も自分の欠点が口に出して言えるくらい自己肯定感が高い状態にしてあげてください。認めてあげてください。

そうしたら、本人のことが詳しく載っている教科書が保護者と本人の中に出来上がります。その教科書があれば、学校でも効率的に学ぶことが出来るでしょう。社会に出ても自分について書かれた教科書が自分の中にあれば、周囲にも自分を知ってもらうことが出来るので不安を感じることはありません。

今はまだ頼りない我が子も自分の力でしっかりと生きていけます。充実した人生を楽しく送ることが出来るようになります。

そのためにもまずは、ペアレント・トレーニングをどんな方法でも構わないので学んでください。

そう言われても何をどうすれば良いのか分からないときは私たちにご連絡ください。私たちも経験者です。子育てを絶賛実践中でまだ全然ジタバタと足掻いている最中ですから、そんな私たちと一緒に互いを支え合って穏やかな生活を目指しましょうね。

理想は理想

今回は、『子どもの将来を決める、学歴より大切な「たった1つの武器」とは?』という記事をご紹介します。

今から約50年前、現在の70代の人は約6割が高校を卒業したら就職という世界で生きていました。そして今から約20年前、現在の30代や40代前半の人は約2割が高校を卒業したら就職、約7割が高校を卒業したら専門学校や短大、大学へ行くという世界でした。

そして現在、高校を卒業したら就職という人は約1割を切っており、高校を卒業したら専門学校や短大、大学へ行くという人が8割を超えています。

時代によってこうも違うのかと実感してもらえたかと思いますが、では現代で大学に行かずに高校を卒業して就職した子や高校にも行けなかった子はダメな子かというと、そんなことは全くないと、力強く全力でハッキリと断言します。

専門学校や短大、大学へ行く人が多いのは、学びたいという強い意欲があり、通うためのお金を用意することが出来、その学んだことで自分一人を賄えるくらいのお金を稼げるようになるためです。

行けないからといってダメな子なわけではありません。むしろ、周囲が皆んな行ってるからと大学まで出してもらったのに、自分の出来ること、得意不得意をしっかりと知ることが出来ず、自分一人ではしんどくて生きていけないという大人はたくさんいます。

その点、何かを全力で頑張ったことがある子は自分を分っています。

高校野球で吐きそうになるくらい自分の体を追い込んだ。胃が痛くなるほど勉強を頑張った。習い事のピアノを泣きながらやった。

保護者も学生の時、自分のしんどさを分かってくれない周囲にイライラしながら、不機嫌をまき散らしながらやっていましたよね。

途中でケガをして続けられなかったとか結果が出なかったとか、悔しい思いをしたという人も多いと思いますが、そこがその時の自分の限界だった、あれ以上にやれと言われても無理だったと誰もが痛いほどに理解させられたはずです。

そうです。吐きそうになる、胃が痛くなる、泣く、イライラする、不機嫌になるというのは限界のサインなのです。

発達にでこぼこのある子も同じです。限界ラインが”普通”の人よりも低過ぎるために、出来ないことや苦手なことだと、少ししかやっていなくてもすぐに限界を迎えてしまいます。

もちろん、発達にでこぼこがあっても年齢と共に出来ることも増えていきますし、実際に出来るようにもなるでしょう。ですが、それと比例するように、やらなきゃいけないこと、出来るようにならないといけないことも増えるのです。

終わりが見えませんよね。出来るようにならなければいけないことがたくさんあり過ぎて、周囲の皆んなに着いていけないのです。

私たち日本人は”普通”の人であろうと日々努力していますが、皆んなが頭に思い浮かべる”普通”の人とは、国語や道徳の教科書に出て来るような、常識を持っていて親切で優しく、誰とでも仲良く出来、何でも解決出来るような人間です。皆んなから素晴らしいと讃えられるような人物です。学校の通知表で言うとオール5の存在です。

そんな存在、身近にそうそういませんし、仮にいたとしても宝くじが当たったくらいの奇跡の存在ですよね。野球の大谷翔平選手や将棋の藤井聡太棋士、東大に行くような人物が同じ教室で学んでいた。隣の席に座っていたくらいの確率です。

私たちが思っている”普通”は本来なら理想と呼ばれるものであり、その理想の人になれているのなら学校の成績は良かったはずです。でも、全ての教科で5を取れていた人なんて滅多におらず、5を取れたことがないという人も多いと思います。

一般的に“普通”とは、通知表でいう3です。5じゃありません。でも、皆んなが最終的に目指すべきなのは5の理想です。

義務教育が何故義務なのか、それは義務教育中に学校で学ぶ内容が人として理想とする姿だからです。

じゃあやっぱり出来るようにならなきゃダメじゃんって思いますよね。でも、大人でも理想とする人間になれていない人が多いのです。子どもがそう簡単に出来るはずもありません。すでにある程度出来ているなら、それはその子が凄いだけなのです。

ですが、苦手だったり出来なくても問題はありません。学校にいる間に出来ていなくても良いのです。

すぐすぐは無理でも、人生が終わるまでの長い長い間に、自分のペースで小学校や中学校の内容を出来るだけ理解出来るようにする、理想とする人間に近付けるようにするという課題であれば何とか出来ると思いませんか?

発達にでこぼこのある子も同じです。学校へ行くのがしんどいのは、学校が年齢によって分けられており、学んだことを理解するのに時間が掛かる子ほど着いていけなくなってしまうからです。どんどん授業の内容が分からなくなります。

勉強は出来るのに学校に行くのはしんどいという子の場合は、周囲の子と自分とが違い過ぎて辛くなってしまうのです。

出来過ぎる子だと、まだまだ未熟な部分もあるでしょうが、ほぼ理想的な大人と変わらない言動をします。周囲が未熟な子ばかりの環境だと、出来る自分の方がおかしいと思ってしまいますよね。

どちらにも共通しますが、学校へ行くのがしんどくてもう無理という状態なのであれば、学校に行かせるべきではありません。

本人の頭の中にはしんどいということしか無く、どうしてしんどいのか、何が原因なのかも分かりません。色んな感情が入り混じってぐちゃぐちゃの状態です。

頭の中がしんどいでいっぱいなので何も考えられませんし、何も出来ません。何かが出来たとしても、いつもよりもずっと低いレベルのモノになるでしょう。

そして、そんなレベルの低いモノしか出来ない自分を見て、何をやっているんだ、こんなんじゃダメだと自分をさらに追い込むのです。

なので取り敢えず、学校に行きたくないという本人の希望は叶えてあげてください。保護者に任せておけば大丈夫という頼りになる存在になってあげてください。保護者は味方だよという姿勢を見せてください。

学校に行かなくても良いんだ、行かなくても大丈夫なんだという状況になれば、自分の気持ちを整理することも出来るようになるでしょう。

学校でどんなことがあったのか、何を嫌だと思ったのか、子どもでは語彙力が無さ過ぎて伝えられない場合もあると思います。

そんな時も、こうかな、ああかな、と本人と一緒に考えてあげてください。本人の話をとことん聞いてあげてください。

最後に、発達にでこぼこがあると分かったご家庭の子は、本人が学生期間を終える頃には家族全員が自分をしっかりと理解していることが多いので、就職には強いと思います。

本人に何が出来るのか、何が好きで、どんなことが得意なのかを見極めて、本人に最適な就職先を見つけたり、本人にピッタリな仕事そのものを創り出す手伝いをしてあげてくださいね。

理想を追い求め過ぎてしんどい時は私たちにご相談ください。無理しても良いことはありませんからね。同じ発達にでこぼこがある子を抱える私たちとおしゃべりしてリラックスしましょうね。

ストレス反応が出てしまった時は

今回は、『強引な誘いに困惑』という記事をご紹介します。

発達にでこぼこがある・ないに関わらず、声の大きい人や体格の良い人、自分よりも上の立場の人から自分の意思とは違うことを言われてストレスを感じたという方は多いと思います。

上司から飲みに誘われた。とても急いでいる時、偶然会った友だちから大声で呼び止められた。自分よりも体格の良い人から好意を向けられた。親から自分の未熟な部分についてあれこれと言われた。

いずれの場合も相手は善意や好意からの行動ですが、自分の意思が相手が求めているものとは違う場合、断ったり対応するには少し勇気が要りますよね。ストレスが掛かります。

自己肯定感が低かったり感受性の強い繊細な子だと、たとえ仲の良いお友だちから一緒に遊ぼうと誘ってもらえていたとしても、本人がその子と遊びたいとは思っていなかったり別なことをしたいと思っている場合、”普通”の人たちが思っている以上に強いストレスを感じてしまうことがあります。

せっかく誘ってくれたのに断ったら相手が嫌な気持ちになるかもしれない。怒るかもしれない。嫌われてしまうかもしれない。次は誘ってくれなくなるかも。

大切なお友だちであればあるほど断るのが難しくなってしまい、優しい子ほど自分の意思を無視してお友だちの意思を優先させてしまうのです。

自分の意思を無視しているわけですからストレスを感じますが、ちょっと指先を切ったくらいの軽微なものなので、大したことはないだろうとそれも無視をします。ですが、それがどんどん積み重なっていくとどうなるでしょう。

ちょっと指先を切ったくらいのケガが体中に増えていき、優しい子であれば優しい子であるほどケガがまだ治り切っていなくても、痛みを我慢して自らケガを負うのです。

体中がそんなケガだらけの状態だと、ちょっとの刺激でも強い痛みを感じるようになりますよね。痛みで動けなくなりますし、出来るものも出来なくなります。

ケガや骨折などで動けない状態になったことがある人なら分かると思いますが、悪気は無くてもケガをしている所を触られたら当然怒りますよね。何度も痛みを与えて来る人間には止めろと言います。

心の傷も一緒です。

実際、口に出す子もいるでしょう。イヤだ、やりたくない、出来ない、無理だと言葉で訴えたり、泣き出す怒るなどの行動に移せる子もいるでしょう。

問題行動として捉えられてしまうそれらは、耐え切れないほどの痛みを抱えている幼い子が、残った力を振り絞ってこれ以上痛みを与えるのはやめてくれと懸命に訴えているだけなのです。

そして、自己肯定感が低かったり感受性の強い繊細な子は、優し過ぎるがゆえにそれも出来ません。何も言わず、無理に無理を重ねて良い子を演じ、ただひたすらに我慢してしまいます。

止めてくれと言っても変わらず痛めつけて来る人間が身近にいたとしたら、自分の力だけでは痛めつけて来る人間から離れられないとしたら、人は絶望するしかありません。

絶望した人間が次に何をするかなんて、誰もが分かり切っていますよね。

そんな状態になる前に、我が子にストレス反応と言われる症状が出始めたら、まずは本人の話をよく聞いてあげてください。元凶が明らかなのであれば、それを排除するために動いてください。

そして、本人が抱えている生活に関するものを出来るだけ保護者が引き受けてあげてください。

心に負った傷を治す方法は、体の傷を治す方法とそれほど変わりありません。あまり動かないよう安静にしてよく眠り、栄養のあるものを食べて、傷が治るまで自分にとって健やかな状態を保つこと。

体に負った傷は見えますが、心の傷は見えないため、ストレス反応が出ている状態を軽く見てしまいがちですが、”普通”の人がストレス反応が出るくらいの体の傷と同じだと思えば分かりやすいのではないでしょうか。

ストレス反応が出るくらいの体の傷というと、下手すれば交通事故で入院している患者さんレベルです。とりあえず確実に足を骨折くらいはしてます。

そんな人間に動けなんて言えませんよね。足を骨折している本人が動こうとしようものなら、何やってるんだって怒りますよね。足が治るまでは動くな安静にしておけと言うのではないでしょうか。トイレやお風呂以外は動かなくて済むよう身の回りのお世話だってしますよね。

ストレス反応が出ている子には、それくらいの勢いで対応しなければもっと酷くなってしまうのです。

徹底的に安静にして、本人の表情が明るくなったりあれこれと動けるようになって来たら、次はリハビリの時間です。

心の傷は再発しやすいです。ストレス反応が無くなったといっても、剥き出しだった傷にかさぶたが出来たくらいのものです。同じ場所にまた傷を負えばあっさりと元の傷が開きますし、全ての傷が完全に治るまでにはかなりの時間がかかります。

なので、ストレス反応が無くなったからといってすぐ元の状態に戻すのではなく、ストレス反応が出ないような範囲内で出来ることを少しずつ少しずつ増やしていくようにします。これがリハビリです。

同時に、どんなことが自分にとって心の傷になってしまうのかを知り、新たに傷を負っただろう時には、ストレス反応が出ていなくても安静にするという予防的な措置も取れるよう訓練します。

そうこうしているうちに剥き出しだった心の傷も塞がっていくと思いますが、塞がった傷は歪ではありますが強くなっています。いっぱい傷付いたからこそ、同じような傷を持つ人に対して優しくもなれるでしょう。

我が子がそんな大人になれるよう、保護者はただただ本人の身の回りのお世話と、本人の話を聞いてあげてください。どうすれば良いのか考えてあげてください。

本人にストレス反応が出てしまうと保護者も大変だと思います。保護者にもストレス反応が出てしまった時は、家事は最低限にして自分の体を労ってあげてください。本人と一緒にのんびりしてください。

本人や保護者のストレス反応がなかなか消えてくれない時は私たちにご相談ください。色々と溜め込んでいるものを我慢して吐き出さないのもストレスになりますからね。似たような悩みを抱える私たちがお待ちしております。